寺山修司の短歌 16 舐めて癒す
舐めて癒すボクサーの傷わかき傷羨みゆけば深夜の市電
若いボクサーは、傷付いても少し舐めれば治ってしまうように立ち直るのも早いが、歳を重ねるとそうはいかない。傷付くことを怖れ、若さを羨むうち、気が付けば人生も終盤にさしかかっている。
人生を「ボクサー」に例えているが、「傷」はむしろ心の傷に重きが置かれ、過去に深く傷付いた私は人生に臆病になっている。
「深夜の市電」は人生が終わりに近づいているという暗示であろうが、一人、また一人と周りから人が居なくなってゆく様子を連想させる。
by 寺山修司(てらやま しゅうじ)
青森県出身の歌人、劇作家
演劇実験室「天井桟敷」主宰
言葉の錬金術師、昭和の啄木などの異名を持つ
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