寺山修司の短歌 66 蠅叩き


蠅叩き舐めいる冬の蠅一匹なぐさめられて酔いて帰れば


「蝿が蝿叩きを舐める」のは、(蝿叩きで叩こうとする)人間を嘲笑する比喩であろう。
「冬の蝿一匹」は、季節外れの生き残りの蝿で、死が近いことを連想させる。

(辛いことがあって)人に慰められて酔って帰れば、まるで私を嘲笑するかのように、季節外れの生き残りの蝿が一匹、蝿叩きを舐めていたのだ。

by 寺山修司(てらやま しゅうじ)  

青森県出身の歌人、劇作家   
演劇実験室「天井桟敷」主宰   
言葉の錬金術師、昭和の啄木などの異名を持つ

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