寺山修司の短歌 67 村境の


村境の春や錆びたる捨て車輪ふるさとまとめて花いちもんめ 


「村境」は、村人が村外と認識する地点。
「車輪」は、変化をもたらす能力と、現状を変える必要性を示すのだが…。
「ふるさとまとめて花いちもんめ」は、各地に残る「わらべ唄」で、貧しかった時代には口減らしのために、花(若い娘の隠語)を1匁単位の値段でやり取りした人身売買の様子を歌ったものでもある。また、「ふるさとまとめて」には、故郷を捨てての意味がある。

村境(村外れ)に春が来て、「ふるさとまとめて花いちもんめ」のわらべ唄に乗せて、口減らしのために(村から)若い娘が売られてゆく。
まるで錆びて捨てられた車輪のように、(自分たちには)それをどうする事もできないのだ。

by 寺山修司(てらやま しゅうじ)  

青森県出身の歌人、劇作家   
演劇実験室「天井桟敷」主宰   
言葉の錬金術師、昭和の啄木などの異名を持つ

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