寺山修司の短歌 71 地平線


地平線縫ひ閉ぢむため針箱に姉がかくしておきし絹針


「地平線(の綻び)」は、母性的な受容性(の綻び)を象徴。
「針箱に隠された絹針」とは、絹布など(=デリケートな母との関係)を縫い閉じるための細い針が、隠されて針箱の中に眠っている事を意味する。
「姉」は、自分自身の内面や身近な人間関係の象徴で、寺山に姉はいない。

地平線を縫い閉じるための絹針が針箱の中に隠されてしまったように、拗れてしまった母との関係を修復する手立てを見付けられずにいるのだ。

by 寺山修司(てらやま しゅうじ)  

青森県出身の歌人、劇作家   
演劇実験室「天井桟敷」主宰   
言葉の錬金術師、昭和の啄木などの異名を持つ

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