寺山修司の短歌 99 そのなかの


そのなかの弾痕のある一本の樹を愛すゆえ寒林通る


「弾痕のある一本の樹」とは、心に傷を持つ一人の男、即ち自分を指すのだろう。
「寒林」は、冬枯れの寒々とした林。死体を捨てる場所の意味もある。

冬枯れの寒々とした林に足を踏み入れるのは、その中で弾痕のある一本の樹を愛すように、群衆の中で心に傷を負った自分が愛おしいからなのだ。

by 寺山修司(てらやま しゅうじ)  

青森県出身の歌人、劇作家   
演劇実験室「天井桟敷」主宰   
言葉の錬金術師、昭和の啄木などの異名を持つ

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