寺山修司の短歌 109 サンドバッグを
サンドバッグをわが叩くとき町中の不幸な青年よ 目を醒ませ
<>を付けた意味は何だろう。
「サンドバッグ」は、打撃練習用の大きな皮袋で、愚痴の聞き役や八つ当たりの対象をいうのだろう。
「青年」は、広く社会の中で自立を獲得していく時期で、怒りや迷い、不安といった自らの感情を持て余しており、悉(ことごと)く不幸を内在していると言えなくもない。
社会の中で自立出来ずにもがき苦しむ全ての青年に向け、「立ち上がって、持て余している自らの感情をぶつけて来い。私がサンドバッグとなって受け止めてやる」というのだろうか。
by 寺山修司(てらやま しゅうじ)
青森県出身の歌人、劇作家
演劇実験室「天井桟敷」主宰
言葉の錬金術師、昭和の啄木などの異名を持つ
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