寺山修司の短歌 111 忘られし


忘られし遠き空家ゆ 山鳩のみづから処刑する歌聞ゆ


「空家」は、愛を得られず寂しい気持ちや居場所がないことの暗喩。
「〜ゆ」は、名詞に付く格助詞で、この場合は動作・作用の起点を表す。〜から。
「山鳩」は、野生の鳩。自分自身のこと。

(愛を得られず)忘れられて久しい孤独な心から、山鳩が自ら野生を放棄するように、飼い慣らされてゆく自分を嘲る歌が聞こえてくる。

by 寺山修司(てらやま しゅうじ)  

青森県出身の歌人、劇作家   
演劇実験室「天井桟敷」主宰   
言葉の錬金術師、昭和の啄木などの異名を持つ 

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